体験談&ひとこと解説集
ここに掲載する「体験談」は、以下のような方に向けて発信しています…
- ご自身の現在の苦境を悲観しているあなたへ
- こういうことで悩んでいるのは自分だけじゃないんだ。」と気づいてほしい
- 今の状況を打破したいけれど、何をどう、どこに相談していいのかわからない、と一人で抱えているあなたへ
- 今の状況を打破したいけれど、何をどう、どこに相談していいのかわからない、と一人で抱えているあなたへ
- SNSの情報に埋もれすぎて飽和状態になっているあなたへ
- ブログなどにはいくつもの体験談が日夜更新されていますが、それらの体験談が正しい情報を届けてくれるとは限りません。このページでは、当事者がしたためた生の体験談に対して、不登校に限らず様々な家族や子どもの育ちの相談に乗ってきた公認心理師・臨床心理士によるポイント解説を加えています。体験談を読んで受ける印象が独り歩きし、地域情報や行政のシステムについての情報が誤って受け取られることのないように最善を尽くしました。
SNSの情報をどれだけ集めた所で、唯一無二であるご自身とご自身を取り囲む環境にジャストフィットするはずがありません。自分のケースの場合、どうなんだろう??と思ったら、是非すぐ近くの聞けそうな専門家にまず確認してみてほしいと思います。
誰もが一番手っ取り早く相談できる身近な相談先は、市役所です。市町村によって、相談に乗る部署の名称が違いますので、まずはインフォメーション受付に行き、どんな相談をしたいか話してみてください。そうすると、部署に案内してもらえますよ。電話の場合も同じです。まず代表番号に電話をして、どういう相談をしたいか話してみてくださいね。
おことわり
- 以下に掲載する体験談は、全て、発達の特性がある子どもが不登校になったという体験をした当事者保護者の方が当ページの掲載趣旨を理解した上で自発的に寄稿してくださったものです。
- 具体的な支援資源・相談先や市町村名が出てきますが、その掲載の仕方・表現方法については、それぞれ執筆者の要望に沿って、話し合いの末で掲載しています。事情は一人として同じであることはなく、それぞれ様々な要素・条件が複雑に絡み合った中で不登校という現象が起きているはずです。同じところに相談に行ったり同じ支援機関に関わりさえすれば、あなたが抱えている事情や今抱えている不安が必ず解消されるという事を保証するものではありませんので、心の余裕を持ちながら、参考にしてください。
このページは、2024年度水戸信用金庫による「常磐大学における地域課題の解決に関する教育研究の奨励」教育研究助成を受けて作成されたものです。

体験談1
「我が子の登校しぶりと向き合って」
ペンネーム うめ子さん@県南
01登校渋りから始まった登校生活の不快感
息子が登校しぶりを始めたのは、コロナでの一斉休校が解除された小4の時でした。
病院で小2で「注意欠如多動症(ADHD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断され、国語と算数だけは地元の公立小学校の特別支援学級(自閉・情緒障害児学級)で、それ以外は通常学級で授業を受けていました。しかししばらく自宅で過ごすうちに、学校のザワザワとした音や給食の匂いで過剰に疲れるようになり、また、マスク着用の不快感も追い打ちをかけ、遅刻・早退・欠席など織り交ぜつつの登校スタイルに。
02学校を「居やすい場」に
この頃から、小学校の特別支援教育コーディネーターの先生に相談しながら対応していくこととなりました。具体的にどう対応していったかというと、まず、国語と算数以外もほぼ全てを特別支援学級や図書室で過ごすことに変更し、ザワザワ音から逃れ、落ち着いた環境で学べるようにしていただきました。音楽や英語など一斉に音や話し声が発生する授業は全く参加できませんでしたが、特別支援学級の担任の先生が個別に縦笛を教えてくださったり、英語のプリントを見てくださったりしたのが大変ありがたかったです。
03学校外の地域資源を有効活用して一人で抱えずに我が子と向き合う
また、認定特定非営利活動法人 茨城YMCAの放課後デイサービスに通い、学校以外の居場所があることを体感できたことも、本人にとって大きな助けになったようです。
私自身もYKストレスケアオフィスが開催しているふくろうCLUBに参加したり、心理師さんに相談したりして、学校に通うことや授業でやっている単元にリアルタイムで追いつくことにこだわりすぎず、長期的な視点で子どもの成長を見られるようになりました。心理師さんに話すことで頭のモヤモヤが解消され、息子との信頼関係が深まる良い方向につながっていきました。
04登校渋りをきっかけにして「生きる力」を伸ばす子育てにシフト
現在、中学生になった息子は、自分の苦手なことや困り感を先生に説明しながら課題の内容や分量・学校で過ごす時間を自分のキャパシティーに合ったものに調整できるようになりつつあります。それは今後、進学したり働いたりするうえでも「生きる力」として彼自身の味方になってくれるものだと思っています。
心理師からひとこと
- 「発達障害」の診断を受けるケースにおいて、多くの場合、保護者は1歳半健診の段階では内心「発語の遅れ」や「応答性の悪さ」「呼びかけ、指示に殆ど応じない」等の子どもの特性に気づき始めています。しかし、病院に行ってもはっきりとした診断をつけてもらえるのは満2歳以降になってからです。
- 幼稚園や保育園といった集団に子どもを入れた場合、面談などの場で保育者から指摘を受けたり勧められたりして、病院に連れて行く展開になる事が殆どです。子どもの脳の発達を考えると、早期に大人が子どもの特性に気づき、正しく評価・査定して、少しでも生きやすい環境づくりや発達促進的関わり(療育)を充実させていく事が大切です。この考え方を「早期発見・早期療育」と言います。多くのケースにおいて、小学校に入る前には診断とそれに基づく療育支援を受け始めますので、子どもが小学2年生で診断を初めて受けた、という本ケースは決して早いわけではありません。
- 子どもの発達特性を就学前に専門家から正しく評価してもらい、保護者がそれを受け入れ理解する、という営みは、子どもの就学後の精神の安定を左右するとても重要な事です。つくば市や下妻市の場合、年2回ほど、保護者の為の「就学学習会」が開かれています。子どもが無理なくよりフィットした教育環境で学習できるようにするために、どのような種別の学級に所属するのが妥当かを検討する上でとても参考になる機会となります。
心理師からひとこと
- 注意欠如多動症(ADHD)
- 英名の頭文字をとって「ADHD」と表記されます。ひと昔前は、「注意欠陥多動障害」と和訳されていました。現在の「発達障害」の概念を構成する児童精神医学における診断名の一つです。周囲の状況に対してまんべんなく注意を配ることがとても苦手、思い立ったが吉日という感じで頭に浮かんだことをすぐに行動に移してしまう為に、すべてに手を付けてすべてが中途半端になりやすい、ひとところにじっとしていることが極端に苦手―日常生活に支障をきたすレベルでこのような特徴を持つ人たちです。実際には、忘れ物の多さ、あれこれ気になる事が多すぎて優先順位をつけられない、約束に対するルーズさ、気の短さ、悪気なく天真爛漫さを発揮し人間関係でつまづく、運動の雑さ、コントロールの弱さ等が問題となることが多いです。単純に「落ち着きがないそわそわした人」という所見ではありません。
心理師からひとこと
- 「自閉スペクトラム症(ASD)」
- 英名の頭文字をとって「ASD」と表記されます。ひと昔前に「自閉症」「広汎性発達障害」「自閉性障害」等と和訳されていた概念と似ていますが、障害に対する捉え方自体が変わりました。連続体という意味の「スペクトラム」という言葉が診断名に入れられたように、設定された診断基準の条件に全て当てはまればその診断名、と言う従来の考え方ではなく、光のグラデーションのように「ASDらしさ」にはより特性が濃い人から薄目の人までのグラデーションがある、という考え方となりました。それなので、同じASDの診断を受けている人でも、実際のありようにはかなりの幅、多様性があります。興味関心が限られ、好きな事には深い探究心を維持して没頭する能力に長けている事が多いです。一方で、「皆で一緒に」を共有する事に興味が薄く、いわゆるコミュニケーションにおける「行間」「空気」を読むことが人間関係上支障をきたすレベルで苦手な特徴を持つ人たちです。表情等の情報から他者の気持ちや内心、思考パタンを想像する事が苦手な為、変化に弱く、人間関係を築くことや新しい環境になじむことは大きな負担感となりやすいです。不安感が強いと、自分が安心できる物や活動への執着が強くなりがちで、その様子は他者からみて「こだわり」と受け取られることがあります。
心理師からひとこと
- 学校(集団・人の集合している場)での音や匂いで過剰に疲れる
- ヒトには五種類の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)を受け取る器官(それぞれ眼・耳・舌・鼻・肌と粘膜)が備わっていますが、それぞれの感覚刺激の受け取りやすさには、過敏―鈍感まで相当の幅があり、個性があります。自分が気にならない刺激でも、他人はすごく気になる―その逆もよくあることですが、つとに発達特性が強いお子さんは多かれ少なかれ、この感覚刺激に対する鋭敏性に感覚の種類によって大きな差があることが多いです。
心理師からひとこと
- マスク着用の不快感
- 触感覚や嗅覚に過敏性が強い人の場合、マスクを着ける事自体がとても強い不快感をもたらすことがあります。また、マスクを装着した顔は、顔の表情に関する情報を眼のみでしか判断する事ができず、視覚が優位なバランスの人にとって、表情が読み取りにくく、コミュニケーションをとる事自体に大きな負荷がかかる場合があります。
心理師からひとこと
- 特別支援教育コーディネーター
- 現在、日本の公立小中学校(特別支援学校を含む)には、必ず「特別支援教育コーディネーター」という役職を与えられた教員がいます。校長が指名していますが、校長の判断で、養護教諭(保健室の先生)や特別支援学級の担任教諭、学年主任や教務主任など、学校によって様々な立場の教員が指名されています。この特別支援教育コーディネーターの先生は、特別支援教育が必要な児童生徒さんに対する学校側と家庭側の橋渡し・連絡調整役・相談役を担っています。そして特別支援学校は、地域の公立小中学校の特別支援コーディネーターのセンターであり、元締め的な役割を担っています。子どもたち一人一人のより安定した環境と継続的な学びの権利の保障のため、病院や市役所、児童相談所等の外部の機関との協力が必要な場合、担任教諭と共に積極的に関わる事が多いです。
心理師からひとこと
- 心理師に子どものことを相談するメリット
- 学校に通うお子様がいるご家庭にとって、最も身近な心理職は、スクールカウンセラーだと思います。現在の我が国の場合、心理職に就いている人は、「公認心理師」という国家資格か「臨床心理士」という民間資格を有しています。「公認心理師」資格は、2017年に漸くできた待望の心理職としての国家資格です。現在、キャリアが20年程度かそれ未満の心理職は、この国家資格を持っている事が就職活動において重要な世代となっています。

体験談2
「息子が特別支援学級に入るまで」
ペンネーム RMさん@県南
01生まれたときから心配ばかりの息子
息子には、先天性の病気があり、生後1か月で手術をした。予定日を過ぎてからも中々生まれず、物凄い難産だった。
1歳くらいの時。他の子を見ると、「○○取ってきて!」とママが言うと取って来ているではないか。あの子、非言語コミュニケーションが取れている!ウチの子、できてないな?!と思うような事が多くなり、保健センターでやる1歳半健診の時に相談した。 そこで「指さしをしますか?」と質問されたのが頭に残り、そういえば、ウチの子しないよなあー、と思ってその夜一人で「指さししない」というキーワードでネット検索 してみた。すると、「自閉症」というワードが出てくるではないか。
心臓の事にしてもそうだが、自分や身内が病気や障がいを持たない限り、なかなかその事について詳しく知ろうとしない、知らない人が殆どなのではないだろうか。プラスに考えれば、我が子のお陰で勉強になった事は、大いにあると言えるのではあるが…。
02幼稚園入園の壁
我が子は水に執着があった。水道を見つけると蛇口を思いっきり捻る事がよくあった。幼稚園の入園面談の時、テーブルの上に置いてあったフラワーフロートを何度も倒した。その幼稚園の先生に病院を紹介され、すぐに「自閉スペクトラム症」と「ADHD」と診断がついた 。地域差もあるとは思うが、その時息子は私立幼稚園の入園を全部断られて 、公園でも他の子とのトラブルが多く、母親として精神的に辛い事が多かった。
結局、息子は公立の2年保育の幼稚園に入った のだが、それでも他の園児とのトラブルでよく幼稚園から電話がかかって来た。
03就学先で揉めつつも特別支援学級へ
年長の年に他県からつくば市に転入した。転入後は一見、落ち着いたかのようにみえた息子だったが、就学相談を受けたら特別支援学級を勧められた 。特別支援学級に入るかどうかは、最終的に親の責任になるのだが、教育委員会から通知が来た直後は、家族間でかなり揉めた。 その時私は、人は何故少数派に注目し多数派に馴染もうとするのだろう…と考えた。最終的に体験入学を通じて、特別支援学級(自閉・情緒学級)への入学となり、小学校生活がスタートしたのだが、結果、良かったと思った。なぜなら、分かってるように見えて分かってない事が多いその段階の息子には、息子の事をよく理解してくれる支援者が必要だと痛感したからだ。体験入学も済ませてすっかり小学校になじめる気持ちになっているものだと思っていたのに、入学直後「なんで小学校行かなきゃないの?幼稚園の方が良かった」などと息子が朝に行き渋る事もあった。家族であっても理解できない事はあるから、一人で抱え込まず、学校内にも相談できる先生や保護者の人を作った方が親も子どもも幸せになれるのではないかなと思う。
04今になって思う事
そんな息子について今になって思う事を、母親である私自身の学生時代の話に遡りながら最後に述べたいと思う。
日本には「学校に行かないという事はダメな事」という風潮があり、私自身、「学校は行かなければいけないところ」と思い込んでいた。
今の時代は、まだまだ理解されにくい事はあるけれど、それでも大分社会の理解も増えてきて、昔よりはいい時代に変わりつつあると思いたい。
誰かに理解される事、理解してもらおうとする事がどれだけ大変な事か…—私は、学校で全く「話さない」子どもだった。正確には「話せなかった」のだが、その頃は、全て学校で話せない自分が悪いと思っていた。今思い返すと、そうやって自分が傷付く事から自分を守っていたのだと思う。 学校という場は、ルールの下に皆が同じように動くところ。ちょっとでも他と違うと思う子はいじめのターゲットとなる。その子を庇えば、今度は、その庇った子がいじめられる。それでも、当時の私は、いじめていた子達を悪いとは思わなかった。自分が何も言わないからいけないんだと思い込んでいた。実際、その時の担任の先生にも「あなたにも原因はあるんだからね」と言われたことがあった。今となっては、いじめてた方の心に問題があったのかなと思うのだが…。当時は、いじめ自殺が流行っていて一部の人達からは心配されたのだけれど、私は自殺したいと思った事は一度もなかった。なぜなら、私をいじめていた奴らがのうのうと幸せに生きていくのが許せなかったから。自分がこの世で一番、不幸な人間だと思いながら死ぬなんて絶対に嫌だと思ったからだ。
学生時代に生きづらさを抱えてきた人は、結局は、社会に出てからも苦労する。私は、就職氷河期世代というのもあり、ただでさえ就職が困難だったのだが、面接が大の苦手だった。短大の時、就職指導の先生に言われた「あなた、友達いないでしょ、そんなんじゃ何処も就職できない!」という発言は、未だにずっと心に残っている 。この一言で私は、熱心に就活する気を失くしてしまった。
それほど高い学歴があるわけでもなく、才能があるわけでもなかったら、誰からも必要とされないだろう。しかし、生活する為には、お金が必要だ。結局仕方なく比較的すぐに採用されやすい仕事を片っ端からやってみたが、どれも長続きはしなかった。向き不向き、やりたい仕事とできる仕事は違う。
よく「誰にでもできる簡単な仕事です!」という募集の仕方があるが、そういった仕事が向かない人もいる。だったら、そんな募集の仕方しないでほしいと思うのであった。
日本にいる事自体が嫌になり、ワーキングホリデーで外国に逃げた事もあった。しかし、どこに行っても自分自身が変わらない限り、何も変わらない事に気付いた。逃げても現実は、どこまでも追ってくる。ただ、視野を広げる為に一度、その事から離れてみるっていうのもありかもしれない。今は、結婚して子どもがいて、今すぐ働かなくては生きていけない状況ではないけれど、未だ天職というものには出会えず模索中である。
人生は、人それぞれどんな環境で育つか、どんな人と出会うかで変わって行くものだと思う。
学生時代は、学校がすべてと思ってしまいがちだけど、人生は、長い。
心理師からひとこと
- 保健センターで行われる乳幼児健診
- 現在日本では、厚労省が各市町村での実施を定めている乳幼児健診という事業が運用されています。これを法定健診と呼び、1歳半児と3歳児に対する健診がこれにあたります。しかし実際には、ちょうど1歳半あるいは満3歳になる月齢の時に召集がかからない場合もあります。例えば発話の場合、1歳半という月齢だと、まだ問診票の項目によってはクリアできないとしても平均的な発達を辿る児がいることがあるので、敢えて1歳10か月~満2歳にずらしたり、3歳児健診も、3歳5か月で実施したりということが多いです。いずれの場合も、住民票のある住所に封書で問診票入りの通知が届くことで召集がかかる事が殆どです。さらに、就学(小学校に入学する事)が見通せるようになる5歳児に対する5歳児健診も国が推奨しており、茨城県内では導入する市町村がかなり増えてきています。これらの乳幼児健診は、通常は市町村の保健センターを会場にして実施されます。これと混同されがちなのが、教育委員会が主催し、年長の年の10月頃に小学校を会場として開催されることが多い(必ずしも通う予定の小学校でなければならないという決まりはない)就学前健診です。就学前健診はハガキでの通知となる事が多く、集団教育による授業を行うにあたっての心身の状態が備わっているかの確認が目的です。
心理師からひとこと
子どもの気になる特徴をキーワード入力してネット検索する、というのは本当に「沼」に自ら足を突っ込むようなものでお勧めできません。相談の現場でも、ひと通りネット検索して沢山の情報を蓄えた状態で来談される保護者様がいらっしゃいますが、このような行動をして気持ちが晴れたりまとまって良かった、と終われる方は本当に少なく、多くの場合は余計に不安になってしまったり、誤情報に気づかず様々な誤解や思い込みを持ってしまったりしていて逆効果にみえます。ネット上にある子どもの発達や子育てに関する情報は、専門家であれば気づくことができる間違いが、ほぼほぼ正しい中に埋もれていたりします。我が子のことをよく知りたかったら、専門家(子どもの発達を見る事ができる児童精神科医か心理師)に我が子のことを直接相談するというのが、最も不安を根こそぎ払しょくできる手段と言えるでしょう。
心理師からひとこと
- 診断とは
- 発達の特性について診断を受けるには、子どもの発達を診られる児童精神科医のもとを受診しなければなりません。診断をするのは医師の仕事ですので、医師以外の(例えば心理師のような)職種は、基本的に診断に関しては明言をすることはできない立場にいます。ただ、発達の特性に関する相談を多く受けるキャリアがある場合、子どもの行動観察や保護者から寄せられる日頃の子どもの言動などから、医師のもとを受診すればきっとこの診断名を付けるだろうな、という予測が立つようにはなります。時に、医師以外の職種の支援者から「診断を受けました」と語る保護者の方がいるのですが、そのような誤解を生むようなやり取りは避けられるべきです。
受診先は全国的に大変限られていて、成人対象の精神科もそうなのですが、初診までに3か月~半年待ちということもあります。発達の特性自体を「治す」薬は現在存在しません。一部生活しづらいほどの特性を生活しやすくマイルドにしてくれるようなお薬は特性の種類によっては開発されていますが、子どもの場合は成人以上に副作用との兼ね合い等も重要になってきます。このように考えるとお薬が発達の特性に役立つ部分はとても小さいです。その為、多くのケースでは、診断を受けるメリットは、療育を受けたい時、あるいは何らかの行政サービスを申請したい時、障がい者枠での就職活動を展開したい時などに限られます。
心理師からひとこと
- 私立幼稚園、保育園、子ども園の強み
- 私立園の最大の特長は、園の個性を存分に発揮できること。習い事等、多様な外部機関との連携があったり、特定の宗教に則った行事や教育・保育が展開されていたりするということです。保護者の目線から言えば、私立園はサイトを読み込んだうえで見学してみて、直接園児の様子を見てみる事が必須で、我が子に合うかは園との相性によるところが大きいです。また、もう一つの特長として、合う先生がいた場合、ずっと関わり続けられるという点も挙げる事ができるでしょう。一方、発達特性のある子どもに対して私立園を選ぶリスクは、公立と違って私立にはその園独自のカリキュラムや保育方針に合わない子どもの入園を拒否する事ができるという点にあります。同時に、私立園の場合は、その園が属する法人がどの程度の資金を有するかということや園の保育方針によって、職員が受ける研修に大きな差があります。当然、園生活における必要経費や揃えなければならない物品も違います。経営者が変わることによって方針なども一気に変わる事があるので、よく情報を集める必要があると言えるでしょう。
心理師からひとこと
- 公立幼稚園、保育園、子ども園の強み
- 公立の最大の特長は、全国の公立園は押しなべて同等の質が保障されている(べきだしそうあるはずとして運用されている)と言う「安心感」に尽きます。とても研修に熱心な運営体制を敷いている私立園には負ける事もあるでしょうが、全く研修システムが整っていない私立園もある現状においては、公立の「安心感」が何よりありがたいと思う方もいらっしゃるでしょう。また、経費も最小限におさえられますし、様々な事情に合わせて補助を受けながら通わせることも可能です。職員が受ける研修も、所属年次によって国や自治体が定め、予算を配置しています。私立と違って条件を満たす人であれば、病気や障がいがあっても入園を断られることはありません。但し保護者目線からすると、とても我が子と相性が合う先生がいたとしても公立園をまたいでの異動がありえる、と言う点が痛いです。
心理師からひとこと
- 預け先から電話がくる辛さ
- 預け先の園や学校から家庭に対して電話がくる時、我が子を褒める電話がくることは殆どありません。熱心な先生が頻繁に電話してきて、その日にみられた我が子の困難や他児とのトラブルを報告してくる事の辛さを吐露される保護者様は多いです。
心理師からひとこと
- 就学相談とは
- 就学相談とは、保護者の申し込みによって年長の年の4月~6月頃から開始される、小学校をどの種別のクラスで過ごすようにするかという事(だけ)に関する相談のことです。相談に乗るのは、各市町村の教育委員会に属する「就学相談員」という肩書の人で、この人たちは元学校教員(管理職クラスのこともある)だったり心理師だったりします。就学相談に応じた子どもだけが、11月から各市町村にて開催される就学支援会議(市町村によって名称が異なります)にて議題として上がり、教育委員会としてどの種別のクラスで過ごすことをお勧めするか検討してもらえます。つまり、就学相談を受けていない子どもは、自動的に全員普通小学校の普通学級(25人~30人1クラスで担任が1人)所属一択になるということです。その為、発達の特性により、普通小学校の普通級での学習に不安が感じられる子どもの保護者は、就学相談を受ける事を視野に入れる必要があります。就学支援会議の結果は12月下旬~1月にかけて個別に伝えられ、その内容を踏まえて最終的には保護者が子どもの就学先を決定することになります。
心理師からひとこと
- 発達障害の原因は養育者にあるのか?
- 発達障害は、生まれつき脳の機能の発達の道筋がアンバランスさを伴っている、というのが定義ですので、「発達障害になったのは養育者の育て方のせい」というのは間違いです。但し、実際にお会いしていると、血縁親のどちらか、あるいは両方に、子どもと同じようなアンバランスさがあったり、これまでの人生で同様の生きづらさを体験していたりと言う事はよくあるように感じます。発達障害はここ20数年で出てきた概念で、今の現役親世代の人たちの幼少期にはなかった概念ですから、自分が今の診断基準で言うと発達障害に該当すると思わず生活している場合もたくさんあります。一方、虐待やマルトリートメントを日常的に受けるような環境で子どもが育つと、脳がその環境に適応した結果として萎縮等の変性を起こし、はたからみるとあたかも発達障害児かのような言動が見られるようになることが科学的にもわかってきています(友田明美先生の本が参考になります)。支援者がこのような発言をするのであれば、このあたりのことを理解した上で、きちんと見立て、親御さんのお子様への理解の深まりに繋がり得るような表現で話してほしいものです。
心理師からひとこと
- 就労移行支援
- 今は、発達特性がある方の雇用枠も創設されてきており、また、就労を手助けしてくれる仕組みもでき、多くの方が利用しています。これらの多くは行政サービスとなっていますので、支援を受けるには医師の診断が必要な場合が多いです。サービスを受けるためには医師による「診断」という支援が必要になるわけですが、実際の就労においては、ソーシャルワーカーや心理師等の頼れる生活支援資源を活用していただきたいです。

体験談3
「不登校とフリースクール」
ペンネーム ゆかりさん
息子は未就学のころから登園を渋ることがあり、理由を聞くと「疲れたから」と言うことが多かったです。小学校に入学してからも起床して準備をしても、どうしても靴を履いて玄関から出て行けないときが月に数回あり、登校を間引きながら過ごしました。ただ、登校した日は隣の席のお友達と楽しそうに話したり、授業にも真面目に取り組んでいて、いじめや学校で過ごしづらくなるような要因は見当たらず、担任の先生も首を傾げ、様子を見ながら進めましょうということになりました。
特に育てづらさも無い子供でしたが、学校から帰宅するとささいなことで癇癪を起こしたり、宿題に取り組む順番に強烈なこだわりがあったりと気になる面もあったため、筑波学園病院小児科の発達外来を受診することにしました。
WISCを受けた結果、得意なことと苦手なことに非常に差がある自閉症スペクトラムということが解り、また周囲の雑音を気にして手で耳を覆う場面も見られ、音への過敏も学校での過ごしづらさにつながっているだろうと見立てられました。
学年が進むにつれ登校は全くできなくなりましたが、絵を描いたり粘土細工や工作を楽しんだり、料理を手伝いながら重さや分量の計算をしたりと、心身ともにゆったり過ごし、落ち着いてきたところで、フリースクールの見学を始めました。
むすびつくばを見学して本人が気に入ったので、週に半日の登園から開始して少しずつ時間や日数を増やし、今ではすべての登園日に通うまでになりました。同年代の気の合うお友達もでき、毎日笑顔で過ごしていることが親として何よりも嬉しいです。
フリースクールではいわゆる教科書に沿った勉強のやり方とは違うので、親戚が心配したりもしますが、まず心身ともに元気で物事への興味関心を失わないことが大事で、今の出会いや刺激のなかで成長と共に好きな分野を開拓していってくれることと思います。
心理師からひとこと
- WISC
- ウェクスラー式知能検査の略名。アメリカの心理学者で知能に関する研究をしたウェクスラーによって開発された知能検査の一つです。WISCは5歳から16歳11カ月を対象としていて、現在第5版改定版が最新版となっています。この検査を受ければ発達にでこぼこがある=発達特性があるかどうかを調べられると思う保護者が多いですが、それは誤解です。この検査はウェクスラーの知能理論にもとづいて、人間の知的活動を構成する要素がどの程度のレベルかを調べるものですから、発達障害であるかどうかを調べるテストでは全くありません。WISCが凸凹しているからといって、発達が凸凹しているというわけではない。むしろ、WISCの結果は誰でもある程度は凸凹しているものです。この検査を通して、「学習教材はどんなものが向いているか」「板書スタイルの学び方が合っているのか」「どんな知的作業に興味関心が強そうか」といった事に関して有益な示唆が得られます。

体験談4
「自分の住む地域の不登校支援に限界を感じ、引っ越しを決意・実行。その後、何がどう変わったか。」
ペンネーム @鹿行
「不登校」と一言で言ってもさまざまなケースがありますが、我が家では「引っ越しをすることで視界が大きく開けた」という経験をしました。地域の限界を感じ、引っ越しを検討される方の参考になればと思い、私の経験をシェアします。
引っ越し前に住んでいた茨城県内のある地域Aと、引っ越し先のつくば市の比較をお伝えしていきます。なお、我が子は小1の1学期からの不登校で、現在は小学校高学年、不登校が始まってから発達障害に関する診断を頂いています。
01学校の居場所
地域Aでは、小学校の中に不登校の子どもが過ごすための専用の部屋はありませんでした。また、その対応ができる人員もいないと言われました。WISCの結果が出てからは通級学級の利用を提案されました。週に3回ある通級の時間だけを目当てに1コマ分だけ登校するということを一度だけ試みましたが、それも「教室の外がうるさいから」という理由で1回きりで終わりました。
つくば市の小学校には「校内フリースクール」があり、教室に戻すことを前提としない「ただいるだけでいい」「遊ぶも学ぶも自由な居場所」が用意されていました。学校の運営時間内であれば、いつでも利用可能です。我が子が転校した学校の校内フリースクールは、学年の教室とは別棟にあり、専用の昇降口も備えているなど、登校しにくい子どもが少しでも登校しやすいよう配慮や工夫が施されていました。校内フリースクール担当の教員の他に、3人の支援員さんが交代で子どもたちを見守ってくれています。利用する児童の顔ぶれは多少流動的ですが、我が子が覚えたメンバーはおおむね5〜6名でした。教室内の人数が少ないことも、我が子がこのフリースクールを気に入った理由の一つでした。
02適応指導教室
地域Aでは、適応指導教室は「登校支援教室」という名前で運営されていました。今思えば、文科省の「登校を前提としない不登校対応」とは逆の名称ですが、そこの先生たちもまた、「学校に戻すことが重要」という考えをもっておられる様子でした。
車が2台行き違うことも難しいような細い田舎道の先にある、古めかしいアパートの中にその適応指導教室はありました。利用者はほとんどが中学生とのことでした。「小学生の利用者はほとんどおらず、一度来てもすぐ来なくなる」と言われ、小1の我が子に対しても「しばらくは登校を促し続ける方が良い」と初回の訪問で言われました。小2になってから、改めてスクールソーシャルワーカー同伴で利用申し込みに行って、初めて「利用の案内」の紙を渡され、詳しい説明を聞くことができました。我が子は週に1回の頻度で通い始めましたが、その後自宅の近所に新しくオープンした放課後等デイサービス(リフォーム済の建物でとてもキレイな内装でした)を利用するようになったため、次第に足が遠のくようになりました。最終的には、約2ヶ月の利用にとどまりました。
一方引っ越し後のつくば市では、適応指導教室の「立地」が大きく異なりました。なんと、駅前正面ロータリーに面するビルの1階にありました。「ここまで不登校の子の扱いに差が出るものなのか」と、私にとってこの立地の差は、とても衝撃的な事でした。
利用者の小学生も多く、10名ほどはいたと思います。賑やかな環境が我が子には「うるさい」と嫌がられましたが、近くには大きくて立派な公園もあり、恵まれた環境であると思います。
03民間のフリースクール
地域Aには、民間のフリースクールが1か所だけあります。できたのも最近のことで、我が子の不登校が始まった後でした。近隣の市を含めエリアで唯一のフリースクールでしたが、家から車で30分の距離であり、我が子は遠さを理由に嫌がりました。全国的に見れば、フリースクールまでの通学時間が1、2時間と長くなるのは普通のことだと言われています。しかし、まだ小2や小3では遠さが理由で通えないというのも実際には無理もないことかと思います。
一方、つくば市には私が調べた当時、少なくとも8か所のフリースクールがありました。引っ越し先から車で15分圏内に3か所あり、中学生以上を受け入れるフリースクールを合わせると4か所、適応指導教室を含めれば5か所の選択肢があります。これだけあるなら、1件目が合わなくても、また次を試すことができると考えました。結果として、現在、我が子は校内フリースクールと民間フリースクールの両方を併用しています。
また、つくば市では、市内在住の児童に対してフリースクールの利用補助金(上限20,000円/月)が支給されます。たとえ他の市にあるフリースクールやオンラインフリースクールであっても、補助が受けられると聞いています。この支援制度は、我が家が引っ越しを決めた理由の一つでもあります。
04不登校支援としての訪問看護
不登校支援に訪問看護が利用できる地域が日本のどこかにあることは、SNSで知りました。ダメ元で地域Aの障害福祉課で尋ねてみました。当然ながらありませんでした。逆に「そんなものが本当にあるんですか」と尋ねられてしまう始末でした。
引っ越し後、つくば市のスクールソーシャルワーカーに「訪問看護も利用してみませんか」も言われたとき、「え!つくば市にあるの?」と、大変驚きました。(もっと東京のような大都会にしかないものだと思っていました)
実のところ、つくば市にきて、不登校の我が子への支援資源として最初に利用し始めたのは、この訪問看護になります。週に1回1時間。自宅に来てくれて、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行ってくれます。親の私の愚痴もたまに聞いてもらっています。私は家にいても、いなくても大丈夫とのことなので、最近は自分の用事を作って出かけるようにしています。
費用面でも助かっています。訪問看護は「マル福」を利用でき、月の1回目が600円、2回目も600円、3回目以降は無料です。基本的に月1,200円で利用できています。(出張費などの名目で費用負担が発生する場合もあるようですので、詳しくは訪問看護サービスごとに確認をお願いします)
家に来てくれる訪問看護サービスを、我が子はとても楽しみにしています。一緒にレクリエーションをしたり、話をしたりすることが楽しいようです。私にとっても、家に人が来ることで、ある程度家をきれいに保とうという気持ちが生まれ、良い影響を感じています。
05豊富な医療機関
我が子は児童精神科のある病院に3ヶ月に一回通っていますが、このたびの引っ越しで、通院距離が一気に短くなりました。片道90分が、30分まで減ったのです。
さらに、もっと家に近いリハビリテーションクリニックで、言語聴覚士と作業療法士によるリハビリを受けることができるようになりました。こちらは車で10分の距離です。2週間に一回通っていますが、この距離であれば子供に嫌がられることなく、通院することができています。
地域Aでは、言語聴覚士がリハビリをしてくれる医療機関がありませんでした。社会福祉協議会が開催している、「言葉と発達の相談室」が、小学生を受け入れてくれる唯一の相談先でした。そこの先生には、1年弱の間、大変よくして頂きましたが。
06スクールソーシャルワーカー
不登校支援の訪問看護の存在を教えてくれたスクールソーシャルワーカーですが、つくば市は市の教育委員会所属のスクールソーシャルワーカーがいて、市内の情報にとても詳しい印象でした。
地域Aにいた頃も、スクールソーシャルワーカーにはお世話になっていましたが、県教育委員会から派遣されてくる立場で、近隣の市の学校をいくつも掛け持ちしており、学校にくる頻度も月に1回程度でした。つくば市では、学校に週3回の頻度でスクールソーシャルワーカーが来ているそうで、その差にもとても驚きました。
現在、我が家ではスクールソーシャルワーカーに月に一回家庭訪問をしてもらっていて、主に私の話を聞いてもらったり、様々なアドバイスを頂いたり、学校との連携の手助けをして頂いています。
07その他の気がついたこと
地域Aに住んでいた時は、出かける時にご近所さんや学校の知り合いに会わないか、何か言われたりしないか(実際のところ、そんな「何か」を言ってくる人はいないのですが)と気になっていたのですが、引っ越してからは知り合いが完全にゼロとなり、そのような心配がなくなりました。お店や公共機関に子どもを連れて行っても「今日、学校は?」と聞かれるようなこともありません。地域Aでは日常茶飯事でした(涙)。子どもも「学校の子に会うかもしれなから」と言うことはなくなり、自由に近所の公園やお店に行っています。
集合住宅なので、近所に住む小学生の親たちはおそらく私たち不登校家庭の存在に気づいていますが、特に何も言われませんし、聞かれもしません。ただ普通に挨拶をするのみです。「つくばは昔から研究機関も多くて、研究者も多い。研究者は変わり者も多いから、発達障害にもつくば市の人は理解がある方なのだ」と、誰かが言っていました。本当かどうか分かりませんが、私は案外この説が気に入っているので、そうなのだと思うことにしています。
結論として、引っ越してきてからそろそろ1年が経とうかという今現在、「引っ越してきて良かった」と思う事ばかりです。今現在の形が落ち着いてきたので、そろそろ子どもの将来の進路や選択肢について勉強していこうという気持ちになりつつあります。
最後に、私たちを支えて下さる多くの方に感謝を申し上げ、私の報告と致します。